概要
生成AI検索対策のためのプラットフォームを提供するQueryLift株式会社は、国立大学法人筑波大学 ビジネスサイエンス系の吉田光男准教授と、生成AI検索における情報流通および引用構造に関する共同研究を開始しました。
ChatGPTやGoogle AI Overviewなど、Web検索と大規模言語モデルを組み合わせた生成AI検索の普及により、人々が情報へアクセスする方法と得られる情報の質が大きく変化しています。生成AI検索は、AIが自律してWeb上の情報を収集し、情報を引用しながら回答を生成します。一方で、生成AIがどのようなWebページを引用し、回答を構成するかどうかは産業界だけではなく学術界でも十分に解明されていません。
今回の共同研究では、Web・自然言語処理・ソーシャルメディア分析を専門とする吉田准教授の知見と、QueryLiftが蓄積してきた生成AI検索の計測・評価技術を組み合わせ、生成AI検索における情報源選択、引用構造、および回答形成の実態を明らかにします。
背景
生成AI検索は、ユーザーに高度な検索能力をもたらすだけでなく、情報の発信者である企業や組織にとっても、新たなユーザーに情報を届ける機会となります。ただし、この機会は善意の発信者だけに開かれているわけではありません。
生成AI検索には、悪意ある発信者の情報が回答に入り込みやすい構造的な問題があります。Webは誰でも自由に情報を発信できる場である一方、生成AI検索は発信者が誰であるかを十分に考慮するとは限りません。そのため従来の検索とは異なり、知名度や実績がなくとも、「生成AI検索に引用されやすい形」で情報をWeb上に置くだけで、回答に影響を与えられる余地があります。さらに意図的に歪められた情報が回答に引用されると、ユーザーはAIの流暢な文章を通じて本来の意図に気づかぬまま情報を受け取り、意思決定に用いてしまいます。この性質は、組織に対する認識や評価を歪める「認知攻撃」の効果を最大化させ、長年かけてブランドを築いてきた組織にとって深刻な脅威となります。そこでQueryLiftは、認知攻撃からブランドや組織の信頼を守る「防御の視点」を重視しています。
この問題意識のもと、QueryLiftは、どのような情報源が生成AIの回答に取り込まれ、情報操作の入り口となり得るのかを評価する基盤を世界で初めて設計・開発しました。中核となるのは、回答に引用された情報源について「攻撃者がその情報源に内容を掲載・挿入することが、どの程度容易か」を捉える新しい評価指標「コンテンツ挿入障壁(content-injection barrier)」です。

本研究では、認知攻撃が社会の意思決定に多大な影響を及ぼす政治分野にこの評価基盤を適用し、認知攻撃のリスクを洗い出しました。日本と米国の政党に関する質問に対して主要な3つの生成AI検索モデルが生成した計3,861件の回答を分析・評価した結果、(1) 攻撃面の広さはモデルによって大きく異なること、(2) その違いは、引用の選び方よりも前段のウェブ検索の時点で生じていること、(3) 与党に関する質問は野党に比べて障壁の低い情報源に依存しやすいこと、(4) ユーザーの政治的立場や知識量は引用傾向にほとんど影響しないこと、がわかりました。
本成果をまとめた論文は、情報検索・知識管理分野のトップ国際学術会議である「CIKM 2026」のFull Paper Trackに採択され、口頭発表に選出されました。(https://www.querylift.co.jp/news/eekb_kkj4-v)
共同研究の内容
QueryLiftは、CIKM 2026に採択された研究をはじめ、生成AI検索を多角的に捉える研究に取り組んでいます。この研究開発体制をさらに強化するため、筑波大学の吉田光男准教授との共同研究を開始しました。自然言語処理とWebの双方で培われた吉田准教授の知見と、QueryLiftの専門性および事業現場で得られる課題意識を組み合わせ、実社会における生成AI検索の利用実態を踏まえ、その情報流通や引用構造を明らかにする研究に取り組みます。
本共同研究では、実社会で生成AI検索がどのように活用されているかを捉え、その実態を捉えるための評価方法と、利用環境や技術の変化を継続的に分析するための枠組みを明らかにすることを目指します。
生成AI検索を理解するには、自然言語処理の技術に加え、Web上の情報流通や検索について蓄積されてきた研究の知見が重要です。吉田准教授は、自然言語処理とWebの双方で長年にわたり研究に取り組んできました。本共同研究では、その研究経験を通じて培われた問題意識や分析の視点を取り入れ、生成AI検索において何を問い、どのような観点から評価すべきかを検討します。
QueryLiftには、自然言語処理や情報セキュリティを専門とする若手研究者が在籍しています。それぞれの専門性に加え、研究成果が事業上の課題解決に直結する環境を生かし、実社会での有効性を重視した研究を進めます。
具体的には、実社会で生じている課題や利用状況を研究に生かし、得られた知見について学術的な検証と社会への還元を進め、その成果を次の研究課題へとつなげます。吉田准教授の研究蓄積と、QueryLiftの専門性および実社会で得られる知見を組み合わせ、学術的な検証と実社会における観察を継続的に往復する研究に取り組みます。本共同研究では、特定のサービスやGEO施策の最適化ではなく、生成AI検索における情報源選択、引用構造および情報流通の実態を明らかにすることを主眼とします。
今後の展望
得られた知見を社会へ発信し、企業や組織を含む社会が、生成AI検索の特性や限界を理解するための判断材料を提供していきます。
今回の筑波大学との共同研究では、生成AI検索に関する学術的理解を深め、情報源選択や引用構造に関する知見を蓄積します。QueryLiftでは、こうした研究成果や関連する学術的知見を踏まえ、自社の事業活動への応用を検討してまいります。
共同研究の背景や研究者のコメントなど、詳細はPR TIMESのプレスリリースをご覧ください。