「AI経由で新規登録が増えた」という事例を見ると、自社でもGEOを始めたくなるかもしれません。では、見込み客がAIに自社の製品やサービスについて尋ねたとき、会社のWebサイトには、その疑問に答える情報がそろっているでしょうか。

記事制作、ヘルプの更新、引用元の確認。施策は多く、他社の成果だけを手がかりにしても、自社のどのページから直すべきかは決まりません。まず確かめたいのは、顧客が何を知りたいか、その答えと根拠が自社サイトにあるかです。

本記事では、VercelとTallyが公表した事例をもとに、題材の選び方、説明に加える根拠、既存ページの直し方、登録までの確かめ方を整理します。自社への応用案は、公表された成果と区別して示します。

Vercel:顧客の質問に、自社ならではの根拠を加える

Vercelは2025年6月10日に公開した記事で、ChatGPT経由の新規登録が全体の約10%を占めると公表しました。前月の4.8%、6か月前の1%から増加しており、AI検索が新たな顧客獲得経路になっていることがわかります。ただし、どの施策がこの増加に寄与したかまでは明らかにされていません。

出典:Vercel: How we’re adapting SEO for LLMs and AI search

Vercelが重視しているのは、ユーザーが実際に抱えている疑問を起点に、自社の強みを生かしたコンテンツを制作することです。

具体的には、コミュニティやSNSなどからユーザーの疑問を把握し、自社製品と関連性の高いテーマを選びます。そのうえで、独自データやベンチマーク、顧客事例、専門家の知見などを加え、他社が簡単には再現できない情報を提供します。

ここから学べるのは、記事のテーマを決める段階で「その質問に対して、自社ならではの根拠を示せるか」を確認することの重要性です。

また、Vercelは、短くても単独で意味が伝わる説明や、定期的な情報更新も推奨しています。単に文章を短くするのではなく、回答の対象や適用条件を明確にし、結論とその根拠を近くに配置することがポイントです。

自社で取り入れられる施策

例えば、複数拠点での導入支援を強みとする勤怠管理サービスを考えてみましょう。

「勤怠管理システムのメリット」を広く説明するよりも、「拠点ごとに締め日が異なる場合の管理方法」や「管理者の権限設定で注意すべき点」など、具体的な疑問に答えるコンテンツの方が、自社の強みを伝えやすくなります。

記事には、実際の導入時に発生した課題や対応方法を、公開可能な範囲で盛り込みます。導入効果を数値で示す場合は、対象拠点数や集計期間、比較条件も明記することが重要です。

実績を公開できない場合でも、製品仕様に基づく操作手順や対応範囲を詳しく説明することで、信頼性の高い情報を提供できます。

重要なのは、テーマの選定と根拠の提示を分けて考えることです。

自社の強みから離れたテーマでは、詳しい記事を書いても顧客のニーズと一致しない可能性があります。一方、強みに合ったテーマでも、「使いやすい」「柔軟に対応できる」といった抽象的な説明だけでは、具体的な機能や利用条件が伝わりません。

誰のどのような疑問に答えるのかを明確にし、その回答を裏付ける情報を用意することが大切です。

Tally:AIの回答に不足している情報を、既存ページの改善につなげる

フォーム作成サービスを提供するTallyは、2026年9月22日に公開した記事で、新規ユーザーの43%がChatGPT、Claude、Gemini、PerplexityなどのAIを通じてサービスを知ったと公表しました。

また、登録時のアンケートでも、AIアシスタントから紹介されたという回答が継続的に寄せられていると説明しています。

出典:Tally: 6 years in, $6 million far

TallyがGEO対策として実施しているのは、AIによる自社サービスの言及・引用状況の確認、回答に不足している質問の特定、ヘルプセンターの情報の点検、比較ページの更新などです。

新しい記事を増やすだけでなく、既存の情報が顧客の疑問に十分答えられているかを確認し、必要に応じて改善しています。

自社で取り入れられる施策

先ほどの勤怠管理サービスを例に考えてみましょう。

「拠点ごとに管理者を設定できるか」という質問に対して、AIが正確に回答できていない場合、まず確認すべきなのは公式サイトの権限設定に関する説明です。

機能自体は存在するものの、対応プランや設定手順が記載されていなければ、既存ページを改善する必要があります。

また、顧客の疑問によって、情報を掲載すべきページも異なります。

  • 「何人から利用できるか」→ 料金・契約ページ
  • 「既存データを移行できるか」→ データ移行ガイド
  • 「管理者が閲覧できる範囲はどこまでか」→ 権限設定のヘルプページ

このように質問ごとに公式の回答先を整理することで、ユーザーが必要な情報を見つけやすくなり、営業担当者の説明との一貫性も保ちやすくなります。

ただし、AIが正確に回答できていないからといって、必ずしも公式サイトの情報が不足しているとは限りません。

公式ページには十分な説明があるのに、AIが別の情報源を参照している場合もあります。

そのため、AIの回答内容と引用元を比較し、情報そのものが不足しているのか、既存ページが参照されていないのかを見極めることが重要です。

前者であればコンテンツの追加・更新を、後者であればページの検索・取得されやすさや情報構造の改善を検討します。

GEO対策の成果をどう測るか

自社でGEO対策の成果を測定する場合は、「サイトへの流入経路」と「サービスを知ったきっかけ」を分けて把握することが重要です。

例えば、ChatGPTでサービスを知ったユーザーが、後からGoogleで社名を検索して申し込んだ場合、アクセス解析上では検索エンジン経由の流入として記録される可能性があります。

つまり、問い合わせ直前の流入経路だけでは、AIが認知や比較検討に与えた影響を十分に把握できません。

そこで、登録フォームや問い合わせフォームに「サービスを最初に知ったきっかけ」という任意の質問を設ける方法が考えられます。

AIを選択したユーザーには、利用したAIサービスや質問内容を追加で尋ねることで、どのような疑問から自社が候補に挙がったのかを把握できます。

ただし、アンケートとアクセス解析では測定方法が異なるため、数値を単純に合算しないよう注意が必要です。

また、新規登録数だけでなく、登録後の行動も確認しましょう。

AI経由で登録したユーザーが実際にサービスを利用しているか、商談につながっているか、製品への期待と実際の機能にずれがないかを確認することも重要です。

AIからの紹介が増えていても、自社が想定する顧客層と一致していなければ、紹介数を増やすだけでなく、AIに伝わる製品情報や訴求内容を見直す必要があります。

自社でGEO対策を始めるなら、改善すべきページをどう選ぶか

VercelとTallyの事例を踏まえると、GEO対策の第一歩は、顧客の疑問を把握し、それに答える情報が自社サイトに用意されているかを確認することです。

特に、営業やカスタマーサポートに繰り返し寄せられる質問は、優先的に確認したいテーマです。

まずは、顧客の質問、現在の情報の不足点、改善対象となるページを整理しましょう。

勤怠管理サービスを例にした改善施策

顧客の質問

現在の情報の不足点

検討する改善施策

拠点ごとに締め日を変更できるか

「柔軟に対応」としか説明されていない

製品ページに設定単位・適用条件・操作例を追加

既存の勤怠データを移行できるか

対応形式や移行できない項目が不明

移行ガイドに対応形式・対象項目・制約を追記

少人数でも契約できるか

最低利用人数と料金の関係が不明確

料金ページに最低利用条件と料金の計算例を追加

※上記は改善施策を考えるための架空例です。

例えば、データ移行ガイドを改善する場合は、対応しているファイル形式だけでなく、移行できない項目や制約についても記載します。

AIに推薦されることだけを目的に、自社製品の制約を曖昧にしてしまうと、登録後に顧客の期待とのずれが生じる可能性があります。

GEO対策では、自社の強みを正確に伝えると同時に、利用条件や制約も明確にすることが大切です。

改善後はAIの回答と引用元を継続的に確認する

最初から多くのページを改善するのではなく、まずは一つの質問と一つのページに対象を絞ることをおすすめします。

改善前のAIの回答と引用元を記録し、ページの更新後も同じ質問を使って複数回確認します。

確認するポイントは、主に次の3つです。

  1. AIの回答が正確になったか
  2. 改善したページが引用されるようになったか
  3. 関連する問い合わせや登録に変化があったか

ただし、AIの回答は同じ質問でも変動するため、一度の比較だけで施策の効果を判断することはできません。

質問内容や使用するAIサービス、確認時期などの条件を記録し、一定期間の変化を確認することが重要です。

また、AIの回答にすぐ反映されなかったとしても、顧客に必要な情報を整備することには意味があります。

生成AIでの言及・引用状況に加え、問い合わせ内容や営業・サポートでの質問の変化も確認することで、改善施策の価値をより多角的に評価できます。

GEO対策では、AIに自社を紹介してもらうことだけでなく、顧客が正しい情報をもとに自社サービスを選べる状態をつくることが重要です。

おわりに

VercelとTallyの事例からわかるのは、GEO対策では施策を増やすだけでなく、顧客がどのような疑問を持ち、その答えを自社サイトで提供できているかを見直すことが重要だという点です。

特にTallyは、AIのモデル更新によって推薦結果が変わる可能性を認識しながらも、製品や無料プラン、コミュニティへの投資を続けています。AIに選ばれるための対策と、顧客に選ばれ続けるための取り組みを両立させることが大切です。

出典:Tally: 6 years in, $6 million far

まずは、自社の顧客が生成AIにどのような質問をしているか、その質問に対して自社の情報が正しく紹介されているかを確認することから始めてみてください。

QueryLiftでは、生成AIの回答における自社の言及状況や引用元を継続的に測定・分析し、課題の特定から改善施策の実行まで支援します。

自社のGEO対策についてお悩みの方は、ぜひ一度こちらからお問い合わせください。